タイム技研株式会社




プロダクト開発ストーリー Vol.01

冷温水器編

プロダクト開発ストーリー Vol.01
タイム技研が開発を手掛けた製品の、
知られざるエピソードをご紹介。
数々の課題をクリアし誕生した製品には、
エンジニアたちの「ものづくり」に対する
熱い思いとドラマが込められています。

作りたいものだけを
主張するエゴイストではなく、
「お客様を見ている技術者」
でありたい。

メカトロニクス事業部

近藤広茂
HIROSHIGE KONDO

海外製電磁弁の不具合改善策とは


――近藤さんは冷温水器の電磁弁開発を担当されたそうですが、その経緯を教えてください。
近藤 きっかけは、弊社の営業が大手メーカー様から「現行機種の不具合を解決できないか」というご相談をいただいたことでした。その機種には、当初は海外製の電磁弁を使用していたようです。しかし不具合が発生し、国内メーカーの電磁弁に変えたものの、そこでもまた不具合が発生し困っているとお聞きしました。
具体的な症状としては、電磁弁の水漏れや流量の不安定です。

また、開発にあたって電磁弁の不具合を解消する以外に、コストダウンや、新たな性能を追加してほしいというリクエストもありました。
――クリアすべき課題が複数あり、大手メーカーとの直接取引。プレッシャーも大きかったのでは?
近藤 もちろん、プレッシャーはありました。流通している数も多く、それだけ影響力のある製品でしたし。

結局、これらすべてをクリアするのに2年ほどかかりましたね。でもメーカー様の担当者がとても真摯な方で、文字どおり二人三脚でやらせていただきました。毎月、メーカー様の本社に通って、「ここはもう少し改善してほしい」「これはいいね!」などの打ち合わせを繰り返していきました。
――電磁弁の不具合に対しては、どのようにして解決しましたか?
近藤 電磁弁の不具合原因については、メーカー様から送っていただいた現行品を解析した時点ですぐに判明していました。正直に言いますと、見た瞬間に「あ、この部品ではダメだろうなあ……」と(笑)。その内容は同じ弁メーカーとしてちょっとショックでしたね……。
コストダウンに関しても、タイム技研は数多くの開発をやっており、コストを抑えるノウハウがありましたから、わりとスムーズにクリアできました。
――不具合対策以外に、色々な要求も同時に応えるのは大変だったのは?
近藤 はい。電磁弁の中はとても複雑です。隙間に水が残ることを「死水」と言っているのですが、電磁弁に接続される配管を含め、形状や材質の検討を繰り返し、いかにして「死水」を無くすかの試行錯誤が続きました。

私たちは電磁弁メーカーですが、メーカー様と共に製品を仕上げるという一体感を実感しながら、開発できたと思っています。
自分が携わった製品が世に出て、沢山の方に利用される事を想像すると開発を担当した者としては、やはりワクワクしますね。
海外製電磁弁の不具合改善策とは

電磁弁採用見送りの懸念から、
担当者の熱意による逆転劇


――開発から量産までの約2年間、「もう無理だ!」と思ったことはありませんでしたか?
近藤 まったくなかったです。そんなことを思う余裕もなく、一つひとつの課題をクリアするのに必死でしたから(笑)。
ただ、これはメーカー様の担当の方から聞いたのですが、開発の途中で「電磁弁を使わない方法を考えようか」という話が出ていたそうです。
そこで担当の方は、タイム技研が作った試作品の半年間ぶんの試験結果を出して上層部に掛け合ってくださり、ゴーサインをいただいたと聞きました。「これだけテストをクリアしているのだから、やらせてほしい」と。
ずっと一緒にやってきたので、その思いが本当に嬉しかったです。

おかげさまで、量産体制に入ってから約1年が経ちますが、不良は出ていません。まずは一安心です。
担当の方も、「外出先で自社の冷温水器を見たとき、タイムさんの弁を使用しているものだとホッとする」とおっしゃっていました(笑)。
――プロダクトの開発を担当する過程で、一番やりがいを感じたのはどんなときでしたか?
近藤 開発過程よりも、製品として無事に世に出て、お客様から「ありがとう」などの感謝の言葉をいただいたときですね。
今回の製品のメーカー様は、共同で「ものづくり」をしているという意識のある方たちばかりで、部品の重要性を理解してくれていたため、余計にそう感じるのかもしれません。

担当の方とは、私が訪問した際は食事やお酒の席もご一緒させていただきました。その席で、「担当が近藤さんだったから、ここまでやれた。もしほかの担当に変わっちゃったら、発注を考えさせてもらうかもよ~」と、笑いながら言われまして……。もちろん冗談でしょうし、タイム技研としてそれは大変困ってしまうのですが(笑)、個人的には、そこまで評価してくださり感動しました。
――最後に、近藤さんがエンジニアとして日頃から心がけていることを教えてください。
近藤 プロダクト開発において「こうしてみよう」「あれを使ってみよう」といったアイデアの多くは、自分のこれまでの経験値からくるものです。ですが、それだけでは限界があるので、情報収集は常に意識していますね。
ジャンルは関係なく、ガス・水・電子以外でも、気になるメーカーのホームページや製品のカタログを入手して色々と勉強しています。

特に車業界は、「いいものを安く作る」という点において一番やっていると思うので、どのような技術があるのか情報誌で調べたりしています。もともと車自体に興味もありますし、メカニカルなものが大好きなので楽しいですよ。

私にとって「ものづくり」とは、お客様が欲しているものを形にするための「手段」です。
誤解を恐れずに言うと、私は特許製品を作りたいわけではなくて、むしろすぐにでも使っていただける製品を作りたい。世界を大きく変えることよりも、今、目の前で困っている事案を解決したいのです。それがコストダウンならば、より安く作れるものを模索しますし、コストを抑えつつ、いかにしてよいものを作るかに注力します。

だからこそ、自分の作りたいものだけを主張するようなエゴイストではなく、「お客様を見ている技術者」でありたいと思っています。
電磁弁採用見送りの懸念から、担当者の熱意による逆転劇